SEOコンサルの日常

SEOコンサルが、現場では言えない悩みをつらつらかいていきます

SEOで流入シミュレーション求めるの法律で禁じてください…

業務に忙殺されて更新止まっておりました。

今日はSEOコンサルしていて一番面倒かつ一番無駄かつ無駄なことでお金もらうことが申し訳ない仕事、SEO(自然検索流入)のシミュレーションについて思ってることを書きます。

同じ様な思いをしているSEO,SEM,広告周りの業務を行なっている方も多いかと思います。

なぜシミュレーションの無駄さについて書こうと思ったか

Twitterを眺めていたときに、SEM業界の著名な方々がお話しされていたのを横目で見ていて、心の底から同意しました。

自分が面倒くさがりだから文句いってる訳じゃないことの証明として、虎の威を借ります。(引用させていただきますが、問題ありましたら連絡頂ければと思います)

恐らく発端となったツイート

SEO界隈に広まったきっかけの小西様のツイート

我らが辻様のツイート

我らが木村様のツイート

上記を見る限り、ぺーぺーの自分も、SEM,SEOの著名な方でも同じものを求められ、めんどくさい(無駄)と思っているようです。

どんなお客様にどんな理由でシミュレーションを求められるのか


特に大きな会社様や、人海戦術や多売で売上上げていく必要がある業種の会社様、虎の子の予算を捻出しているお客様によく求められる印象です。

シミュレーションを求められる理由は色々あると思いますが、自分が求められるときによく使われる口上は以下です。

・投資対効果を、判断するため
(言い換え表現として、予算をどれくらいとるか判断するため、数字での説得がないと、上長決済がとれず…、があります)

・今後の運用の際にKPIにしたいため

・コンペで他社様がシミュレーションを出してきたとき(競合のかた、紳士協定結びましょう…)


どれもシミュレーション無いと契約とれない場合が多いので、泣く泣くシミュレーションを検索回数やらGoogleトレンドを参考にしつつ、Excelやらタブローやらで作っています。
(シミュレーションなくとも、自分のことを信じてもらえるレベルになりたいものですが…)

この辺りはSEO、リスティング含む広告、何かしらのツール提供だろうが求められることは同じかもしれません。

SEOでシミュレーションが無意味な理由

SEOにおいてシミュレーションが無駄な理由は思い付く限り以下です。

多ければ多いに越したことはないので、コメントとかで追加の理由があればドシドシください。

1.キーワードごとに何位になるかはやってみないとわからない
2.キーワードごとのCTRが、検索結果によって変わる
3.検索エンジンアルゴリズムの変更によって左右される
4.検索結果が検索場所によって変わる
5.Googleは、検索結果が個人の検索傾向によって変化する
6.季節性や成長率がサイトの過去と、業界の知識が深く無いと判断できない
7.過去と未来の自社、競合の広報活動やメディアでの取り扱われ方によって左右される
8.企業としてサイト改修とコンテンツの作成をどのくらいのスピード感で進められるかが保証できない

上の理由をご覧頂くと、検索エンジン・サイト内外・企業内外の要因によって左右されるのがわかりますでしょうか。

上の項目を洗い出しただけで、胃が痛いですが、個別にどういうことか説明します。

1.キーワードごとに何位になるかはやってみないとわからない

これがもっとも大きい理由ですが、SEOコンサルでも何位になるかはやってみないとわかりません。(それがわかるなら、自分でサイト立ち上げて荒稼ぎします)

プロ野球選手が毎打席ホームランを打てる訳じゃないように、良いバットを使っているか、相手投手の強さや調子、練習を頑張れるか次第によって結果は変わります。

野球のコーチや監督は、効率の良い練習方法や調子の上げ方、相手の弱点とかを教えることはできても、代わりにホームランを打ってくれるわけではありません。

SEOコンサルもそんな感じです。

ただ確実に言えることは、可能な限り早めに取り組んで順位が改善されれば、早めに改善した分の流入やCVが増える可能性があります。

今すぐやれば順位が上がることを、1年後にやれば、1年分の流入を損します。

なので、シミュレーションを考えるよりも先に、やるべきことをやる方が長期的に見ても得です。

2.キーワードごとのCTRが、検索結果によって変わる

シミュレーションの出し方は会社や人によってことなりますが、オーソドックスなものは下記の式をそれぞれのキーワードごとに出したものになるかと思います。

検索回数×上がった場合の順位のCTR=キーワードから獲得できる流入

CTRは下記URLに記載されているような、検索順位ごとのCTRを参考に出していることかと思います。
Announcing: 2017 Google Search Click Through Rate Study


しかし、各順位のCTRは検索結果の状態によって大きく左右されます。

昨今、GoogleもYahooも検索結果上に自社の情報や特に良い情報を検索1位よりも上に持ってくることがあります。
(検索0位とか強調スニペットとか呼ばれるものです)

有名どころだと、Yahooと国立がん研究センターが提携し「がん」に関する検索結果で、広告枠よりも上部に国立がん研究センターのページを表示するように、検索結果を変更しました。
Googleアップデート後に流入2倍の国がん Yahoo!検索とも連携

実際に医療アップデートの流れも伴い、流入数は大きく増えているようですし、逆に今まで「がん」系のキーワードで上位にいたサイトの流入数は大きく減っていることが予測されます。

上記のような検索結果の変更や表示方法が特殊な場合は、1位を取れたとしても想定していたCTRの数値から大きく低くなります。

そのため、上記のような検索結果が存在していることを無視した場合のCTRで流入数を予測するため、正確な数字ではありません。

他にも、競合が魅力的なtitleをつけていたり、自社が1位でも、より有名なサイトが2位の場合は2位のCTRの方が高くなるかもしれません。

上記のような背景を知らないと、パッと見正しいような数値が出ていますが、全く参考になる数値ではありません。

※検索結果を1キーワードずつ見ていくのは、なかなか根気がいる作業で、とてもじゃないですが契約をもらう前にやれることではないです。

3.検索エンジンアルゴリズムの変更によって左右される

1と2に近い話ですが、そもそもページの評価項目はアルゴリズムによって決定されていて、こちら側ではわかりません。(titleや外部リンクなどが評価項目というのはわかっているものの、それ以外の要素も大きく影響します)

そのため、他のサイトで上がった施策が自社サイトで効果があるかの保証もないですし、やってみないとわかりません。

その上、直近ではMFIなど大きなアルゴリズムの変更があった場合は、それによってポジティブにもネガティブにも影響を受けます。

Welq事件があったことで、医療アップデートが起こったように、検索結果によって起こった社会的な影響を受けることも多いに考えられます。(恐らくWelq事件がなかったら、医療アップデートは行われなかったり、もう少し後に行われていたのではないかと考えられます)

検索アルゴリズムの変更は、毎日行われておりますし、大きな変更も1年間に数回ペースで起こります。
それらを予知することや変更内容を詳細に把握することが不可能なため、シミュレーションに組み込むことは出来ません。

そのため、3ヶ月後に1位になったシミュレーションを立てても、その後半年ずっと1位である保証はないですし、数時間単位で順位の変動もあるため、1ヶ月単位でしか見れない検索回数での流入予測は大きくブレが出ます。

4.検索結果が検索場所によって変わる

ヴェニスアップデート、という言葉をご存じでしょうか?

ヴェニスアップデートとは、検索した場所に適した検索結果を返すGoogleアルゴリズムアップデートです。

例えば渋谷で「レストラン」と検索した際に、渋谷周辺のレストランのサイトや渋谷周辺のレストラン一覧が表示されるといった形です。

レストランのように、検索した位置によって検索結果が変わることがユーザーにとって良いキーワードが、自社で取りたいキーワードであった場合は、順位取得ツールで1位でも、検索回数より流入数が大きく下がる可能性があります。

狙うキーワードが、ヴェニスアップデートの影響を受けるかどうかを確認するのは非常に手間です。(1キーワードとかなら良いですが…)

もしヴェニスの影響を受ける場合は、あるキーワードを順位取得した特定のエリアでは1位でも、他のエリアではわかりません。

そのような場合は、検索回数と順位ごとのCTRを元にしたシミュレーションは全く意味がなくなります。

5.Googleは、検索結果が個人の検索傾向によって変化する

パーソナライズド検索という言葉をご存じでしょうか?

Googleは検索する人が過去に訪問したサイトなどを参考に、検索結果を個人個人に最適化しています。

例えば、この記事が「SEO シミュレーション」で10位だったとします。
しかし、このblogをよく見る人の検索結果では、「SEO シミュレーション」で検索したときに、その人の検索結果では1位になっている、といった形です。

「この人はこのサイトをよく見てるから、上の方に出してあげよう」とGoogleが判断して調整してくれるのです。

そのため、すべてのユーザーに対して順位取得ツールの順位で表示されているとは限りません。

6.季節性や成長率がサイトの過去と、業界の知識が深く無いと判断できない

一つ前の見出しで説明した流入数の予測は、キーワードベースでの予測になります。

他のシミュレーションとして、「過去の流入数から、どのくらい成長するかを予測する」出し方があります。

今までSEOをやっていなかった場合に限り、昨年1年間とと一昨年1年間の流入数の伸びを確認し、そこの伸びしろにSEOでどのくらい伸びるかを「アテ」でプラスして、昨年の実際のセッション数にかけ合わせます。

もしくは、直近の1ヶ月のセッション数に対して、このくらい伸びるかな?という%を掛けて行きます。

自分で説明していて思いますが、1~3で説明したように「このくらい伸びる」というのが検索エンジンアルゴリズムによるところなので、全く根拠がありません。

あくまで経験則やカンでしか出せないため、数値の信憑性は全くありません。

また、昨年と一昨年の数値や直近1ヶ月の数値を基準として出しているため、「昨年はサイト立ち上げたばっかりだった」とか「先月は業界的に繁忙期」とか「外部施策をやっていてペナルティを受けていた」などの季節性やサイト内外の要因に大きく影響を受けます。

この辺りの背景を全て知ることは恐らく不可能なので、「シミュレーションしたより伸びない」「シミュレーションしたより伸びすぎてシミュレーションが正しいのか疑問」といった状況になります。

7.過去と未来の自社、競合の広報活動やメディアでの取り扱われ方によって左右される

これも3番と被るのですが、サイトの流入数はWeb上以外の取り組みに大きく左右されます。

テレビCMや街頭モニターなどで、大々的に宣伝を打ったり、業界の中で不祥事が起きたり、逆に取り組みが評価されネットニュースなどで取り上げられたり...

ポジティブ/ネガティブ、自社/競合他社問わずのオフラインでの活動や、普通の営業活動以外での名前の売れ方によって大きく左右されます。

そのため、オフラインでの今後の取り組みや過去の取り組みについて把握する必要があるのですが、そうなると全社的な取り組みの話になってしまい、Webマーケ施策以外の理解がとても重要になります。

しかし、縦割りの部署であった場合は他部署の施策を把握すること自体難しかったりもするので、全体の取り組みを把握することは不可能なことがほとんどですので、実際に爆発的に流入が伸びた原因を調べたり、どこまでをSEO施策以外の効果とするかの線引きも曖昧になってしまいます。

そうなると、シミュレーションも施策の効果検証も全く意味をなさないものになります。

8.企業としてサイト改修とコンテンツの作成をどのくらいのスピード感で進められるかが保証できない

簡単にいってしまえば、どれだけSEOに本腰を入れられるか、です。

例えば、SLAM DUNKの三井が「バスケがしたいです…ただ、練習はしたくないですし、髪も切りたくないです…」と言っていたら、安西先生は許していなかったでしょう。

SEOで強いと言われるサイトは、強いと言われるだけの金と人のリソースをかけています。

SEOコンサルは魔法使いではないので、金も人も割けないけど流入を増やしてくれ、という望みに応えることはできません。

そのため、理想的なシミュレーションを建てたところで、予算上の都合やジョブローテーションなどの社内体制の変更に伴い、当初の計画通りのリソースで進むことは稀です。

その辺りの社内背景を考慮して長期的なシミュレーションを組むことは不可能に近いため、長期的なシミュレーションは意味をなしません。

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長々と思いつく限りのシミュレーションの無駄さについて書かせていただきましたが、まだまだ思いついたら都度加筆していこうかなと思います。

是非、SEOからシミュレーションをなくすための活動だと思って、ご協力ください。

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